彼女と義母と義妹と僕 その170

浴室を出て体を拭くと明はパンツを履いた

そのタイミングを計るように尚子が出てくる

「部長?」

「ああ・・先に行ってるよ・・」

「はい・・」

そう言うと洗面所を出た明はリビングに向かった

その姿を見送りながら尚子も体を拭く

バスタオルで頭を拭きながら椅子に座ると明はテレビをつける

ボタンを押しながら何となくテレビを見て適当なチャンネルで止める

「おまたせしました」

シャツに短パンで現れた尚子はそのまま明の向かいの椅子に座る

「さ、食べようか・・」

尚子を促して明はお弁当を開ける

「美味そうだ・・」

「あはは・・スミマセン・・作らないといけないのに・・」

笑う尚子に明は

「気にしなくていいさ・・」

そう言うと缶ビールを開ける

「じゃ・・乾杯!!」

お互いに缶を当て一口飲む・・

「はぁぁ・・やっぱりうまいな・・風呂上がりのビールは・・」

「ですね・・」

美味しそうに飲む尚子が答えながらお弁当に箸をつける

「部長・・息子さんはこれからどうなさるの?」

食べながら尚子の問いに明は

「さあ・・大学行くつもりじゃないかな」

「ふふ・・なら頑張らないとね・・」

「え?」

意地悪く言う尚子の言葉の意味を計りかねて明は尚子を見る

「だって・・息子さんと娘さんでしょ?頑張って働かないと」

「あ?ああ・・」

答えながら箸を進める

「まあ・・もう少し先さ・・」

そう言いながらビールをあおる

「そうですね・・・」

同じようにビールを飲みながら尚子は

「改めて今日の試合って・・・」

「え?」

「部長は午後からでしたでしょ?」

尚子の言葉に箸を食べ物を口に運びながら

「ああ・・君は朝から見ていたの?」

「ええ・・」

「そうか・・・」

ビールを飲みながら明は沈黙する

「午前中は息子さんと背の高い子ってすごく活躍してましたよ」

尚子の言葉を黙って聞く

「最後の方で一人の女の子が観客席から叫んでました」

「そう・・」

「でも・・午後は・・」

「そうだな・・」

「部長って冷たいんですね・・」

突然の言葉に明は尚子を見る

「え?どうして?」

「だってぇ・・息子さん負けたんですよ・・なのに・・・」

「ああ・・あははは・・」

笑う明に尚子は意外な表情をする

「ああ・・すまん・・」

「どうして?笑えるの?・・・」

ムッとするような表情を浮かべる尚子に明はビールを持つと一口呷ってゆっくりと口を開く

「あいつ・・あいつらは・・強豪で、勝つことが当たり前ってわけではないさ」

じっと自分を見る尚子を見ながら明は

「確かに今日は最後だったかもしれん・・しかし・・人生はこれからさ」

ビールを再び呷りながら明は

「このことがあいつの人生の糧にでもなれば・・それでいいさ・・」

「はあ・・」

「精一杯やったんだろうが・・努力が必ずしも結果に結びつくなんてことはないさ」

「そんな・・」

意外な言葉に尚子は明をじっと見る

「でも・・努力したことは無駄ではないし、君を含めてよく頑張ったって言わしめる試合をしたなら十分さ」

「え?」

「スポーツはやっている人間だけでなく、見ている人間も楽しませないとね・・ははは」

「はあ・・」

「まあ・・次に帰ったら・・褒めてやるさ・・」

「はあ・・」

そう言うと明はビールを飲み干した

「ご馳走様・・・」

そのまま明は立ち上がり・・空いた缶と容器をキッチンに運ぶと

ソファーに横になる

その様子を見ながら尚子も急いで食べる

『きっと今日は無理かもね』

心の中で呟きながらソファーに寝そべる明を見つめる

テレビを見ていた明はそのまま目を閉じていた

コメント

非公開コメント