彼女と義母と義妹と僕 その163

京都を出発した新幹線の中、明と尚子は無言で座っていた

「この辺りはすごく田舎なんですね」

「ああ・・滋賀の辺りは工場とか多いからね」

「そうなんだ・・」

景色を見ながら尚子は呟く

その様子を見ていた明は

「少し眠ったらいいよ・・まだ、2時間くらいは・・」

「え?あ・・はい・・部長もね・・」

「ああ・・」

言いながらややシートを下げる幸いにも二人の後ろに座っている人がいなので

気を使わなくてよかったのが救いだった

「今頃、帰って来たのかな?」

「え?」

シートを同じように倒しながらつぶやく尚子を明は見る

「いえ・・涼真さんでしたっけ?息子さん」

「ああ・・かな?」

「部長にそっくりでしたね・・」

「そうか?」

「でも・・泣かなかったですね・・」

「そうだな・・・」

尚子の言葉に明は呟くように答える

「あいつは人前では多分、泣いてないさ・・・」

「じゃあ?」

「ああ・・一人になれば・・多分・・」

判っているように語る明に

「勝たせてあげたかったですね・・・見ていて思いました」

「そうか・・」

「あたしも学生時代、バレーボールやっていて思い出してしまった」

尚子が外に目をやる

「そう・・実力でいけば絶対に勝てない相手だったろうな・・よくやったさ」

「絶対に?ですか?」

ややムッとした表情で尚子は明を見る

「ああ・・相手は小学校からの強豪で全国レベルのチームだ・・その相手にあの点差はほめるべきさ」

「そ、そんな・・」

「くじ運が悪かったさ・・チームを見ても3年生が涼真とセンターの二人で後は2年・・どうしても難しい部分はある」

「はあ・・」

そのまま続ける明を尚子は見る

「あの子たちのチームも決して弱くはないさ・・本来ならベスト16~8くらいの実力はあるはずさ」

「はい・・」

「ただ、そこに行く前に超えないといけない壁が大きかった・・かな・・」

「残念でしたね・・」

「そうだな・・中学の時も一晩部屋に籠ったまま出てこなかったさ・・」

「そうですか・・」

「ああ・・」

「じゃあ・・奥様大変では?」

尚子の言葉に明は笑うように

「はは・・それは・・わかっているだろうさ・・」

「信用しているんですね・・羨ましい・・」

ややむくれた顔をする尚子に

「心配しなくていいよ・・もうすぐ帰るんだから」

耳元で呟く明にクスッと笑いながら尚子は

「はい・・晩御飯どうしましょうか?」

「そうだな・・食べて帰るか?」

「はい・・」

嬉しそうに言う尚子を見て明は

「じゃあ・・少し眠るといい・・僕もそうするよ」

「あ・・はい・・」

「ちょっと煙草吸ってくる」

「はい・・」

そう言うと席を立って揺れる車内を歩き出さす明を

尚子は黙って見送ると外へ目を移した

外は暗くなって灯りだけが浮かんでいた

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