彼女と義母と義妹と僕 その156




「さあ・・帰ろっか・・・」

歩いて行く健一郎と葵を見ながら雅がつぶやく

「ああ・・行こか・・」

そう言うと二人は反対方向に向かって歩き出す。

歩きながら雅が口を開く

「涼真・・疲れたやろ?大丈夫?」

その言葉を聞きながら涼真は

「ああ・・大丈夫や・・」

言いながらふたりは公園に入る

「ちょっと休むか?」

「うん・・」

公園のベンチに腰を下ろした涼真に雅は

「あ・・ジュース買ってくるわ・・」

雅が鞄を置くと近くにあった自販機に向かっていった

その様子を見ながら涼真の顏は自然にほころんでいた

自販機でジュースを買って戻ってきた雅は

「ほれ・・今日はあたしが奢るわ」

「お・・うれしいな・・」

受け取りながら涼真は笑う

「涼真・・頑張ったもんな・・」

「負けたけどな・・」

笑いながらペットボトルを開ける涼真の横に雅は座る

「ふぅ・・」

一口飲むと涼真は深いため息をついた

「終わったな・・・」

ぼそりと呟いた涼真をみながら雅は

「うん・・」と短く呟いた

「雅はさ・・中学校からやんか・・」

「うん・・」

涼真は一口飲みながら

「それでも6年か・・」

「うん」

雅は短く答え頷くだけだった

「俺と健は小学校4年からやっててさ・・実質9年なんよね・・」

「うん・・」

「小学校でもそこそこやったけど・・中学校からイマイチなチームやったんや」

「うん・・」

「それでも・・頑張ってこれたし・・高校も健がいたからバスケ続けられた」

「うん・・」

「特に中学校からは・・雅の応援・・嬉しかったんや」

「うん・・」

「ありがとうな・・・6年も見てくれて」

そこで初めて雅が涼真を見る

「ははは・・それって・・今更やん・・」

涼真の背中を叩きながら雅が笑う

「いってぇ~な・・」

「あ・・ごめん」

「ああ・・いつのまにか当たり前になってたな・・」

涼真がしみじみ言いながらペットボトルを口に運ぶ

一口飲むと

「そう言えばな・・」

「うん・・」

「一回戦でお前でかい声で叫んだやろ?」

「え?そうやったかな・・・」

雅は答えながら上を見る

『あ・・あのときか』

雅はその場面を思い出す

「あの時、健なんてゆうた思う?」

涼真の言葉に雅はあの場面を回想する。

確かにあの時ふたりは何か言葉を交わしていたようだったが・・

「健、なんかゆうたん?」

雅の言葉に涼真は

「あいつ・・こうゆうたんや・・姫のお達しや・・守るぞって」

その言葉に雅はきょとんとする

「え?姫?」

想像していた言葉に雅は戸惑う

「あたし?姫?・・え?」

その様子を見ながら涼真は続ける

「ああ・・俺たちにとってはお前は姫や・・中学からな」

「そんな・・はっははは」

雅は笑うしかなかった

「ああ・・でもな・・」

真面目な顔をして口を開く涼真は

「今日は・・ふと試合中に思い出したわ・・」

「何を?」

「あ・・中学から試合中に雅が叫ぶときって勝負どころやったなって」

「そうかな?・・あたし‥考えてなかったけど」

はにかみながら雅は答える

涼真が雅の肩を抱き引き寄せる

「あ・・涼真・・」

「雅・・今までありがとうな・・何回も助けてくれて・・」

雅はだまって上目遣いに涼真をみると瞳を閉じた

その唇に涼真はそっと唇を重ねた

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