彼女と義母と義妹と僕 その141

明は無言で裕子たちの方を見つめる

『なんで・・青木君が・・』

平静を装っていても心の中はかなり狼狽していた

コートの中では涼真たちの前の試合が第4Qに入っていた

一旦視線を外してコートに目をやると

歩き出し、観客席から離れた

「あれ?あなた?」

ふと裕子が明がいた場所を見ると明の姿はなかった

『場所を変えたのかな』

さして疑問に思うことなく裕子はコートの試合を見る




階段を下りて1階に着いた明はロビーの椅子に座っていた

「部長・・こんにちは・・」

その声に明は立ちあがる

「あ・・ちょっと・・」

そのままやや離れた所に歩き出した明の後を尚子はついて行く

自販機のそばに来ると尚子の方を向くと明は

「なんでここにいるんだ!!」

やや怒気を含んだ口調で尚子に詰め寄る

「だって・・部長、今日は息子さんの試合見るっていっていたじゃないですか?」

「そうだ!!」

「だから・・あたしも見に来たの・・」

「いや・・困るよ・・」

「うふふ・・息子さんと娘さん・・それに奥様もお顔を見せていただきました」

「ま・・まさか・・なにかしたのか?」

明らかに動揺を見せる明に尚子は意地悪な笑みを浮かべながら

「なにもしてないですよ・・ご安心ください。お顔を見ただけですから」

「と・・とにかく、ばれないようにしてくれないと困るよ・・」

「判ってます・・試合は離れたところで見ますね・・」

「ああ・・そうしてくれ・・」

「ふふ・・部長・・試合はご家族で観戦してください・・私は離れたところで見ます」

「あ・・ああ・・」

「試合が終わったら新大阪駅で待ってます・・一緒に帰りましょ?」

「ああ・・わかった・・とにかく離れているようにしてくれ」

「はいはい・・そろそろ・・試合始まりかもしれないですよ・・」

尚子の言葉に周りを見回すと明は

「わかったね?」

と念押しをするとそそくさと階段を上がっていった

「ふふ・・慌てちゃって・・かわいい」

意地悪い笑みを浮かべながら尚子はエレベーターに向かった

4階まで一気に駆け上がると体育館の中に入ると明は裕子たちのいる場所へ向かう

丁度、試合が終わり涼真たちがアップをしていた

「あ・・あなた?」

裕子が横に来た明を見る

「あ・・お父さん」

「え?」

芽衣と真由が慌てて裕子の隣の明を見る

「ああ・・すまん周りを見ていたんだが見えにくくてね・・」

「芽衣も応援来ていたのか・・あ・・そちらは?こんにちは」

「あ、うん・・この子は同級生の真由・・」

「あ・・はじめまして・・」

「そう・・芽衣の父親です・・よろしく!!」

「あ・・はい・・」

「さて、これから?試合?」

「ええ・・」

「お父さん今日は泊るん?」

芽衣の問いに明は

「いや・・今日は試合終わったら帰るよ・・」

「そう・・」

「終わったら送りますね・・」

「ああ・・」

明は離れて見るつもりだったが尚子を近づけないためにあえて裕子の横に移動した

そうとは気づかない裕子は明に会えたことで自然と顏がほころぶが・・

心の中では明に『あなた・・わたしはもう・・』

この数週間で起こったことが心に影を落とした

「もうすぐか・・」

「え?ええ・・」

「結構観客きてるな・・・」

言いながらさりげなく周りを見回す

「あ・・おれ、やっぱり角で見るわ・・」

「え?あ・・はい・・では終わったら来てくださいね」

「ああ・・じゃあ、芽衣、まゆさん・・あとで」

「うん・・」

言いながら裕子たちから離れて観客席の端に移動した明に

周りに気づかれないように尚子も移動した

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